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【気胸治療記 part 1】救急搬送・入院0〜1日目編

当記事から始まる「気胸治療記」シリーズは、呼吸苦で救急搬送されて自然気胸が発覚し、手術を受けた筆者による治療日記です。

回復するまでの経緯を、時系列につらつらと記録していこうと思います。入院中からInstagramの投稿で記録していたものをベースに、後日加筆・修正しました。

  • 当記事で述べることは、あくまで一患者の体験と解釈に基づきます。医学的に正しい情報や表現であることを保証できません。
  • 今回の件は、コロナ禍の2021年7月の札幌での出来事です。地域や時期によって、各所の対応や最適な行動も異なる場合があります。

突然、謎の動悸と息切れ

自宅にて軽い夕食をとった後、ほんの少しお酒を飲んだ (小さなグラスに日本酒1/2杯)。最近あんまり飲んでなかったから、普段と少し違ったのはそれくらい。椅子に座ってスマホでゲームをしていた。

23:30頃。突然、むせるような咳。これまでに風邪症状は一切ないし、飲食していたわけでもないから気管に何か詰まったわけでもない。ん?なんで?

ドキドキと動悸もし始めた。あれ?と思っているうちに、気の遠くなるめまい。立っていられず、床にへたり込む。

普段の軽い立ちくらみや、ちょっと具合悪い時に視界が狭くなっていくようなめまいとは違う。あれは落ち着いたら起きられる。でも今回は、このまま倒れたら起きられないかもという感覚があった。

近くにあった水を引っ掴んで飲み、なんとか意識を保つ。市内に住む家族に電話をし、間に合わないと感じて直後に#7119に電話。すぐにつながった。

息が吸いきれない。息切れがする。

言葉が、どうしても、途切れ、途切れに、なる。

症状を説明し、緊急度が高いと判断されたため、そのまま119につないでもらい、救急車を呼ぶことになった。

人生初の救急車

24:00頃、救急隊が到着。人生初の救急車に乗る。ストレッチャーに寝かされ、自宅前の夜空を仰ぐのは不思議な気分だった。

そうこうしているうちに動悸は少し落ち着いてきたが、常にひどく息切れするのと、めまいは時々。体位を変えると咳が出る。37.4度ほどの発熱が判明したが、自覚はなかった。物を持ったりすると、指先が震える。少し寒い。

某夜間病院に搬送されることになった。救急隊員の方から、

「基本的には対症療法的なことしかできないので、何もされないこともある。入院施設がなく、最終的には自宅に帰ることになるが、それでもいいか」

という確認があったが、実質選ぶ余地はなかった。朦朧としながらも「そう判断されるなら、お任せします」と同意した。

夜間病院での無力

24:30頃某夜間病院着。心電図をとった後、車椅子に乗せられたが、普通に座ることすらしんどい。

診察に呼ばれ、軽い問診を受けた。心電図には異常がなかったらしい。

では、この呼吸苦は何?

「こういうわけがわからない症状は、新型コロナを疑う。これ以上はここでは何もできない」

「申し訳ないけど制度上どうしようもない」

制度上どうしようもないことはコロナ関係のニュースを追っていて知っていたし、今回原因がわからなければ何もできない可能性があることにも同意していた。

しかしそれ以前に、この医師を信頼できなかった。この人はこれ以上考える気がない。

一見して原因のわからない症状をまとめてコロナで説明しようとして、他の疾患については、代表的なほんのいくつかのものしか念頭にないようだった。

いくら夜間病院とはいえ、立っていられないほどの、それも前触れのない突然の呼吸苦を「わけがわからない」の一言で片付けられたのは、正直不服だった。

病院で合流した母が、医師に食い下がっていたが、それを制して帰ることにした。結局、解熱薬と気管支拡張の貼り薬を処方されて終了。

いや、それにしてもここまで急に発症することあります?

このご時世、どうしてもコロナを疑われるのはわかるが、心当たる行動は本当に何一つしていなかった。若干潔癖の傾向があって人並み以上にコロナ対策はしてきたし、そもそも今年は膝が悪くてステイホームの日々だった。

それでもコロナってやっぱりなってしまうんか…という絶望感がありつつ、他方で、コロナより疑うべき疾患が他にあるのでは?という疑念も強くあった。

なぜなら、これまでにコロナを疑うような風邪症状は一切なくて、全ての症状が一気に出たのは忘れもしない23:30頃、発症時刻がはっきり言えるほど急に起きたことだったから。

医学的な知識がないから身体のどこがどう悪いのかはわからないけれど、自分自身の感覚としては、急性の疾患で、何かしらの処置が必要な状況としか思えなかった。

心当たりがあるとすれば1カ月前に受けた膝の手術の影響くらいで、血栓とか…?

帰宅…できない。

夜間病院で処方された貼り薬を貼って、母の車で自宅まで送ってもらった。

が、到着しても、一向に車から降りられず自室に戻れそうにない。しばらく休んでも息苦しくて、どんな体勢も辛くなってきた。状況は変わらないどころか苦しさが増している気すらする。喋れない。動けない。絶対におかしい。

やっぱり帰宅は無理と判断し、発熱があることから、コロナ関係の#7119に電話するが、何度かけても繋がらず、やむを得ず直接119にかけて、再び救急要請をした。

再び救急車

一晩で2度目の救急車。本来であれば熱があれば先に相談をしてからでないといけないという説明を母が受けていたような気がする。これまでの経緯と、呼吸苦で動けない現状を説明するしかなかった。

この時点で動悸は落ち着いていたが、息切れ・息苦しさ、起き上がるときのむせるような咳、めまいしそうな感覚があった。

救急隊にこれまでの経緯をさらに詳しく話し、先程の夜間病院以外への搬送を強く希望した。

バイタルを見て症状を一通り聞いた救急隊員の方が「呼吸器か…?」と呟いたのを聞いた。

ここでようやく、呼吸器科と入院施設のある病院へ打診していただけて、受け入れが決定した。

そりゃ苦しいわ

搬送先の病院にて、念のため受けたPCR検査は陰性。やはりコロナは考えにくい。

続いて胸のCT・レントゲンを撮ったところ、

「肺に穴空いてるよ」

「気胸って知ってる?」

気胸なんて思ってもみなかった。いやでもそりゃ苦しいわ。片方でしか吸えてないんだもん。まだ何も良くなってはいないけど、原因を突き止めてもらえて安堵した。医療ってすごい。

すぐに専門医の処置が必要とのことで、若い当直医の先生に代わり、早朝出勤してきた呼吸器外科の先生が診てくれた。朦朧とする意識の中で (がっしりしてて呼吸器強そう… )と第一印象を抱いたこの人が、後にものすごくお世話になるM先生。オンコールだったのだろうか。早朝に呼び出してごめんなさい、ありがとうございます。

明らかに「これから痛いことしますよ」という台に載せられ、しばらく待機。

胸腔ドレナージ

準備ができたようで、漏れた空気を出す処置をすると言われた。いわゆる胸腔ドレナージというやつ。胸の横側を少し切って管を入れる。

体勢を整えるも、完全に横向きに寝るとむせてしまう。敬語を使う余裕もなく「苦しい…」とだけなんとか伝えて、中途半端な斜め向きでスタンバイ。

痛い麻酔をされ、胸の横を切られたらしい。麻酔してても痛いし、感覚は鈍っているけれど、ぐりぐりと何かされているのがわかって気持ち悪い。

何かブスッと刺されて、咳我慢してね、と肋骨の辺りをぐいぐい押されると、ぷしゅーーーーと空気が出ていった。これがめちゃくちゃ痛いし苦しい。人生で痛かった記録更新したかもしれない。

サーっと血の気が引いていったので「意識飛びそう…」と申し出たら、

「意識飛んでもいいよ、ちゃんと看護師見てるから」

と先生が言ってくれた。あ、確かに、と思って安心したのを憶えている。

処置が終わると、そのままドレーンを繋がれる。胸の横から指くらいの太さの管が出ていて、それが除湿器みたいな器械に続いていた。

これはこれで、今度は傷口と、管が入った胸が痛くてしんどい。でも、息が吸いきれなくて途切れ途切れにしか喋れなかったのが、ちゃんと呼吸はできるようになっていった。本当に気胸だったんだ。医療ってすごい。

即入院、手術

やっと呼吸が落ち着いたところ、処置を担当してくれた呼吸器外科のM先生から、入院して再発防止のために手術をしたほうがいい、という説明を受けた。無駄なく、でもしっかりとデータを見せながら丁寧に説明してくれる先生で、とても信頼が置けると感じた。

指示に従い、入院して手術を受けることにした。ちょうど1ヵ月前に膝の怪我で人生初の手術を経験済みだったのは、幸か不幸か。あの時は手術を悩んだり怖がったりしてジタバタしていたけれど、今回は「もうどうにでもしてくれ」と言わんばかりに、俎板の鯉状態だった。

病棟へ案内された頃には、夜が明けていた。

「1週間くらいゆっくりして。下のカフェでも行ってきて〜」と、M先生。

うれしいけど、そんな余裕はまだ全然ない。

思い返すと、あの肩こりって

後から冷静になって思い返せば、この件の1週間ちょっと前に、肩こりからくる不調で、外出中にベンチから動けなくなったことがあった。

いま思い返してみると、あれってもしかして肩こりじゃなくて胸痛で、すでに軽く肺に穴空いてたのでは?という気がしてきた。軽度の気胸は安静で落ち着くというし、あのときはすぐに穴が塞がったのかもしれない。しばらく座って休んで、なんとか動けそうになったタイミングで家に帰り、頭痛薬を飲んで寝ていたら良くなった。

実際のところは分からないけれど、前兆があったのだとしたらあの時の不調は心当たりかもしれない。

 

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