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マダミス『狂気山脈』にハマって、アニメ映画『神々の山嶺』を観てきた話(ネタバレON/OFFあり)

マーダーミステリー作品『狂気山脈』にハマって、タイムリーに劇場公開されていた山岳アニメ映画『神々の山嶺(いただき)』を観てきた記録です。

素晴らしい仕上がりの作品でした。日本での注目度としては、過小評価されていると感じます。

というわけで、この映画を観るきっかけとなったマダミス『狂気山脈』の布教を絡めつつ、映画の感想を心ゆくまで綴っていきます。長文語りです。

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アニメ映画『神々の山嶺』は、Prime Videoで配信中です!(23/06/15 現在)

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23/06/15 追記:当記事の前提

アニメ映画『狂気山脈 ネイキッド・ピーク』について(23/06/15 追記)

本記事は、TRPGシナリオ『狂気山脈 ~邪神の山嶺~』を原作とする、アニメ映画『狂気山脈 ネイキッド・ピーク』制作プロジェクトの存在を把握した上で書かれたものであることを申し添えておきます。筆者も微力ながらクラウドファンディング支援をしています。

本記事の主眼は映画『神々の山嶺』と、鑑賞のきっかけとなったマダミス版『狂気山脈』シリーズにありますので、ネイキッド・ピークについてはそのうち別記事で。

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筆者は、アニメ映画『狂気山脈 ネイキッド・ピーク』を応援しています!

以下、ネタバレ部分は注意喚起の上、ON/OFF 表示にしています。
特に表記のない部分は『神々の山嶺』も『狂気山脈』もネタバレなしです。

アニメ映画『神々の山嶺』について

今回観に行った『神々の山嶺(いただき)』は、日本人作家による原作が、フランスでアニメ映画化された作品。海外でも広く読まれていて非常に評価が高い、山岳ものの名作です。

アニメ映画『神々の山嶺』は、夢枕獏氏による同名原作小説を『孤独のグルメ』の谷口ジロー氏が漫画化したものが映画原作となっています。フランスの映画でありながら登場人物はほとんど日本人であり、山以外のパートでは日本が主な舞台です。

物語の主人公は孤高の登山家・羽生と、彼を追うカメラマン・深町。

広告の文言では「究極の冒険ミステリー」と銘打ってはいますが、実際はミステリー要素よりも、畏怖するべき大自然の美しさと残酷さ、そして山に惹きつけられた人間とその周囲の人間ドラマといった要素に主眼を置いた描かれ方をしています。

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山に生きる男の生き様の話やね

本作は、第47回セザール賞(フランスのアカデミー賞に相当する映画賞)でアニメーション映画賞を受賞するなど高い評価を獲得しました。その作品がこの度、凱旋公開ということで日本に逆輸入された次第です。

また本作は日本でのみ、堀内賢雄さん、大塚明夫さん、逢坂良太さん、今井麻美さんら豪華声優陣による吹き替え版が上映されています。

作品情報

アニメ映画『神々の山嶺』- ネタバレなし感想

まずは、アニメ映画『神々の山嶺』自体の感想を。

対比の描き方で魅せる

山を登る者と登らない者、繊細さと壮大さ、日常と非日常。様々な対比が豊かに描かれていながら、1時間半のコンパクトな尺にぎゅっと凝縮されている。一度山を覚えた者の、山に取り憑かれたようなその狂気じみた執念は、山を登らない者には理解できない。その心象描写と、関わりあう人間の温度差の表現がなんとも言えず良い。

原作を踏襲した良質なアニメ

アニメとしては、恐ろしくも美しい山の表現は圧巻でした。近年一般的な3Dアニメでなく、ただひたすら上手い絵が見られる。原作漫画を踏襲した、渋くて古き良きテイスト。

見る人の好みによっては一見とっつきにくい絵柄と思うかもしれない。けれど、それで食わず嫌いしてほしくない。いぶし銀の雰囲気、アニメというより絵画のような緻密さ、人の生きる街と圧倒的な壮大な自然を対比する色彩感覚には、好み以前にこの作品の世界観に引き込む力があります。

背景に描かれる日本の風景もよく観察されていて、素晴らしい仕上がりでした。よくよく見ると不自然な日本語に外国映画を感じる部分もあったりするらしく、もう一度細部をじっくり観てみたい。

効果音のこだわり

また、 静かなシーンでのFoley(効果音)の生々しさが非常に良くできていて、静と動の対比でいい緊張感を出していました。テントで暖かい紅茶を飲むシーン、寝袋のファスナーを上げるシーンとか。こういう細かいところに注目させるシーンと、全てを飲み込んでしまいそうな壮大な山の風景との対比を感じさせる演出が良い。

ネタバレなし感想まとめ:細部のこだわりと原作リスペクトを感じる良作

総じて、きめ細やかなこだわりを感じる非常に良い作品でした。また、答えあわせ的に原作漫画を読んだ後では、原作漫画へのリスペクトも感じます。思い切った改変(内容のカット)をしている部分もありますが、原作を未読でも映画だけで完結する物語としてちょうど良い塩梅になっていて、だれることなく楽しめました。原作で補完する形で、余韻に浸かるのも良いですね。

鑑賞のきっかけ – マダミスとの出会い

ここで一旦『神々の山嶺』から話が逸れますが、特に登山愛好家でも原作ファンでもなかった筆者がこの映画を観に行ったのには、明確な理由がありました。

それが、先日出会ったマーダーミステリー(以下、マダミス)というジャンルのゲームで人気を博している『狂気山脈』シリーズの作品です。この出会いがなければ『神々の山嶺』単体で興味を持つことはなかったでしょう。

マダミスとは「人狼」と「即興劇」を合わせたような、会話を中心とした推理ゲーム。プレイヤーは、他のメンバーに対して秘匿している各々のミッションの達成を目指しつつ、情報収拾や探り合いを経て、物語の真相に迫ります。

オオハシ

参加型のミステリー小説みたいな感じだね

そんなマダミスというジャンルを知って、ゲーム実況動画を視聴する中で出会ったのが『狂気山脈』シリーズでした。5人の登山隊(プレイヤー)で山に登る話。この作品自体がとんでもなく良い出来で、シナリオも配信映えも素晴らしかった。

その『狂気山脈』の解像度が上がると巷でうわさの山岳アニメ映画『神々の山嶺』が、ちょうど公開されたばかりということで、マダミス配信視聴の余韻をそのままに、勢いで観に行ってきたわけです。

マダミス『狂気山脈』シリーズについて

今回『神々の山嶺』を観るきっかけになった、マダミス『狂気山脈』シリーズは「陰謀の分水嶺」、「星ふる天辺」、「薄明三角点」からなる3部作。全ての始まりとなる1周目シナリオ「陰謀の分水嶺」は、2022年7月現在、オンライン版が無料公開されています。太っ腹。

公式DL

【無料】マーダーミステリー『狂気山脈 陰謀の分水嶺』 オンライン用https://booth.pm/ja/items/1980320

この1作目「陰謀の分水嶺」で一気にハマって、様々な卓の各視点の配信アーカイブを視聴しました。尺がとんでもなく長いですが、作業用に聞くのにちょうど良くて、そしてどの卓も面白くてあっという間。

マダミスはそのゲーム特性上、ネタバレを踏むと二度とプレイできません。『狂気山脈』シリーズを自分でプレイする可能性がある方は、以下の動画は絶対に視聴しないでください。

DbD実況者卓。どの視点も面白いけれど、個人的に初見でおすすめしたい視点を挙げるならこちら。

『狂気山脈』と『神々の山嶺』

アニメ映画『神々の山嶺』との関係に話を戻します。

マダミス『狂気山脈』シリーズが『神々の山嶺』をリスペクトしていることは、制作者の方々の発言からも伺えます(厳密に言えばここでの『狂気山脈』は、主にマダミス版よりTRPG版のこと指していると思われます)。

『神々の山嶺』の所々で『狂気山脈』の記憶がリンクすることで、映画そのものの良さ以上に豊かな映画体験ができました。

実際『神々の山嶺』で出てくるキーワードが『狂気山脈』の盤上にも散りばめられており、わかる人はわかる要素になっています。『狂気山脈』を未プレイなら、これらの背景知識を持っていると、ゲーム内で推理や考察がより捗るでしょう。なくてもいいけれど、あったら一人でニヤけて楽しいだろうなという塩梅。

また、映画で雪山の風景や山を登る者の描写を見たことで、脳内補完される映像の解像度が上がるので、映画鑑賞後にまた配信アーカイブを漁って余韻も楽しめます。

特に、これはネタバレではなく高所登山に対する一般的なイメージの話ですが、極高所での表現は『狂気山脈』にも通じるところがあり面白かったです。人知の及ばぬ厳しい自然が、いかに過酷な環境なのかというイメージが湧くという意味で。

オオハシ

SAN値チェックですか?

アニメ映画『神々の山嶺』と マダミス『狂気山脈』- ネタバレ感想

さて、まだ語り足りないのでここからはネタバレ感想です。

本節の袋とじは、アニメ映画『神々の山嶺』と、マダミス『狂気山脈』シリーズ完結編「薄明三角点」までのネタバレを含みます。

オオハシ

すばらしい作品なので、初見は自分でプレイ、もしくは配信アーカイブ視聴して擬似的にでもゲーム体験してほしい〜〜

狂気山脈の解像度が上がりすぎて「薄明三角点」がもはや映画

2周目シナリオ「星ふる天辺」を観終えたタイミングで、映画『神々の山嶺』を鑑賞。山の風景だったり、山を登る心理に対して解像度がバキバキに上がったところで、3周目シナリオの「薄明三角点」を視聴しました。映像が完璧に脳内再生されるので、もう1本映画を観たような気分になります。

特に「薄明三角点」のバグ演出と、映画での極高所描写は近いものがある。過酷な環境で生死を彷徨いながらも山にしがみつく登山家の狂気的なまでの山に対する執念と、クトゥルフ的世界観での狂気描写というのは親和性が高いのでしょう。

▼ 「薄明三角点」で一番好きな卓。DbD卓の雰囲気好きだ〜〜

『神々の山嶺』へのオマージュ – キーアイテムの重複

わかる人にはわかるハイコンテクストな話が盛り盛りでした。先に映画を観てよかった。

『狂気山脈』シリーズ、とりわけ3周目シナリオの「薄明三角点」では『神々の山嶺』のオマージュがあちこちに散りばめられています。

盤面のカードにある「ナイロンザイル」、「ベスト・ポケット・コダックB」は作中に出てくるキーアイテムでした。不穏すぎる、そして違う世界線の話だとわかる。「神々の山嶺」という直球なカードもありました。

事前知識として『神々の山嶺』を知っていると、こういったワードから連想できる事柄から、ゲーム内での推理につながることがありそうです。

マダミス『狂気山脈』擬似OST

余談ですが、マダミス狂気山脈では公式が推奨BGMリストを公開されており、GMによってはこれに忠実に音楽を利用しています(上記動画でも採用)。オリジナルで書き下ろすだけでなく、こういう手法でも実質OSTみたいなことができていて、クリエイター目線でも非常に勉強になりました。そして世界観を彩る選曲が非常に良い。

【BGMリスト】マダミス狂気山脈【※曲名にネタバレあり】|まだら牛|pixivFANBOX
https://madara-usi.fanbox.cc/posts/2140067

関連作品について

次は答え合わせとして、漫画版『神々の山嶺』を読もうと思ってポチりました。あとは『狂気の山脈にて』も読みたいし、マダミス『狂気山脈』公式のコンプリートガイドも読みたい。

22/08/09 追記:後日読みました。

関連作品 ①:漫画版『神々の山嶺』

マダミス狂気山脈の共同原作者のダバさんが、映画見た後の答え合わせ方式を推奨していたので、その通りにしてみました。結果、よかったと思います。映画版での情報の削ぎ落とし方が絶妙だった。

アニメ映画版では色々な要素を削ることで尺的にもサクッと終えていましたが、漫画版では、羽生丈二という山に魅入られた男の人生がより濃く描かれていました。

数々のエピソードから彼の生きづらさを読み取るにつけ、今の時代ならおそらく何らかの発達障害やそれに準じるグレーゾーンの人間として説明がつくのだろうと思います。単に「不器用な山男」では片付けられない生きづらさを感じる。

本作は純粋な山岳ものというよりは「そうとしか生きられない」人間たちの人生ドラマの側面も強い。映画を見た上で原作漫画を読んで、そういう印象に変わりました。

そしてとんでもない画力。敢えてKindle版を買ってiPadの大きめの画面で読みましたが、えげつない書き込みと壮大な山の風景を堪能できて良かったです。

マダミス狂気山脈に出会わなければ絶対に手に取ることのなかった作品だけど、機会に恵まれてこの素晴らしい作品に出会えたことは幸運でした。

オオハシ

読んでよかった。ぜひもっと多くの人に知ってほしい

関連作品 ②:小説版『神々の山嶺』

漫画版の原作となった小説。積ん読。

¥990 (2023/06/15 19:45時点 | Amazon調べ)

関連作品 ③:マダミス狂気山脈完全解説読本

マダミス『狂気山脈』シリーズの制作者が出している公式コンプリートガイド。3部作のネタバレ全開で、プレイ後・視聴後の余韻にどっぷり浸るのに最適な読み物でした。

装丁が美しく、良い紙使っていて立派。内容も詰め詰めで満足感があり、マダミス狂気山脈を愛する人はきっと楽しめる。

またメイキングについてかなり突っ込んだ話までしてくれていて、分野問わず多くのクリエイターにとっても非常に刺激になると思います。

特に、チーム作業において誰が何をしたのかという分担と、各々の制作スタイルや美意識のすり合わせ(あるいは敢えてすり合わせない)過程の話が面白かった。

思っていた以上に制作側が意図してデザインしていた部分が多くて、成る程ここまで考えて体験設計していたのだなと感嘆したとともに納得しました。コンセプトの目の付け所も、それを実現する力も凄すぎる。

公式販売URL

【マダミス狂気山脈完全解説読本】狂気山脈 陰謀の分水嶺 THE COMPLETE GUIDE
https://dappleox.booth.pm/items/3137663

作品情報

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