SEEC過去作の『籠庭のクックロビン』をプレイし、全エンドを回収しました。
目次
本編ネタバレなし感想

ダークでゴシックな世界観や、個性的なキャラクターたちが魅力的な作品。
他方、同社の他作品と比較すると、本編は描写に物足りなさを感じる部分もあって、個人的には他の作品の方が好きだな〜という評価です。
課金コンテンツである設定資料集で、とんでもない設定がてんこ盛りだったので「なぜこれを本編でやらない?」と困惑してしまいました。
作品を伝えるってなかなか難しい。作り手は明確な設定を用意していて、それを前提に物語を動かしていることが分かったけれど、ちょっと「察して」が多すぎる。
現在はSwitch版でも配信されていて、買い切り1,200円で、アプリ版での課金コンテンツも解放されていますので、そちらでサクッとプレイする方がいいかもしれません。
本編ネタバレあり感想
物語の真相について
真相は、割とストレートな落とし所でした。
タイトルである『籠庭のクックロビン』からも、ゲーム内で繰り返し引用されるフレーズからも、この作品がマザー・グースの一篇「Who killed Cock Robin」をモチーフにしていることが示唆されています。
この時点で不穏な空気ではあるわけですが、どこかに犯人が潜んでいるミステリー方面の話かなと思ったら、シンプルにしんどい悲劇でしたね。
きっかけは非常にショッキングな出来事ではあるけれど、ロビンがあそこまで狂気に囚われてしまった経緯については描写が薄いというか、愛する者が傍にいながら、絶望で終わらず発狂までしてしまったのはどういうことなのだろうと、少しモヤる。
印象的だったエンディングについて
《オウルエンド》
ジャックを信じるなら、ジャックの言いつけをしっかり覚えていて、それを守らないといけない。ジャックから「誰も信じるな」と言われたのに「ジャック」を信じてしまったから、オウルに嵌められた。良い感じにゾッとするエンドでした。
《リネットエンド》
主人に忠実だったリネットが、大恩ある旦那を裏切ってロビンと逃げるエンド。最初にこのエンドに到達したときは、葛藤するリネットの心情を測りかねるところがありました。リネットがロビンに入れ込む描写がずいぶん唐突に感じる。
ただ、他のエンドを回収してすべて知った上で改めてこのエンドを見ると、分別をわきまえた聡明な少年であるリネットが、良心の呵責に苦しみながら逃亡生活を肯定する姿が痛々しい。ここの関係性、もっと深掘りしてほしかった…!
本編での登場人物の掘り下げの浅さが気になる
率直な感想としては、もっと登場人物たちを深掘りしてほしかった。各キャラの設定が見られる資料集が課金コンテンツで出ていましたが、そういうことではなくて。
本編のシナリオを語る上で、人物の背景をもう少し丁寧に描写してくれた方が伝わったと思うのです。設定がたくさんあるのに回収しきれていない。広げた風呂敷は畳んでほしかった。
一番モヤるのは、旦那がロビンに惚れた描写がないこと。もし一目惚れなら一目惚れでいいんです、その描写があれば。ロビンのどんな姿を見てどう思ったのか。2人が恋仲になった経緯を全く見せられないので、終盤で突然の恋仲カミングアウトの展開は唐突な印象でした。
旦那がロビンを引き取ったときはまだ子ども。その時点から彼女を育て上げたく感じて引き取ったのか、引き取った彼女と過ごすうちに惹かれていったのか。かなりの年の差カップルに見えるけれど、時代背景だけで察するにはいささか強引ではなかろうか。
SEEC後発作品では、本編のシナリオの中である程度それぞれのキャラを深めていたり、本編で触れないことには触れないと割り切った姿勢が見えるので、消化不良感もなく、課金コンテンツでより深く楽しむ気にもなれたのですが。本作はその辺りのデザインがあまりよくない。
設定資料集の感想(ネタバレなし)
何度でも言うけど、これなんで本編でやらなかった? 本編に入れるのが難しかったにしても、課金コンテンツの追加ストーリーでシナリオにしてほしかった。
数々の緻密な設定を全て「裏設定」のくくりにしてしまったのが本当にもったいない。本編外のテキストだけで語るにはあまりに重要な設定が多すぎる。そういう演出だとしても、せめて一人称であるロビンのことは、ゲーム体験の中で知りたかった。
全てを知った上で2周目をプレイすると、見えてくるものが全然変わってくる。
今のSEECさんだったら特別ストーリーとかに入れるだろうか。本当に、なぜここまで本編で端折ってしまったのか。
総評

キャラクターや世界観は魅力的な設定ながら、本編で回収されない謎が多すぎてnot for me感が拭えない作品でした。勿体なさすぎる。
キャラクターについて、人柄や心情、エピソードがもう少し深掘りされていれば、かなり刺さったかもしれない。
他方、広告を見れば無料でプレイできて、微課金で大幅に時短できるということと、ゆっくりやっても2日くらいでサクッとクリアできる程よいボリュームだったのはありがたかったです。
後から知ったSwitch版は、横画面で操作性も良さそうですし、そちらでプレイすればよかったかなと思います。
SEECファンなら押さえておきたい作品ではありますが、個人的には、SEEC作品初心者には別の後発作品をおすすめしたいところです。
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作品情報
https://se-ec.co.jp/appli/cockrobin/