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『紡ロジック』感想・レビュー:ほっこり青春系日常ミステリ…?何か様子がおかしい【ネタバレON/OFFあり】

先日クリアした『ウーユリーフの処方箋』が非常に好みだったので、同じSEEC社のアプリゲームで、ウーユリーフと同じベノマ玲さんシナリオの過去作『紡ロジック(つむぐろじっく)』をプレイしました。

オオハシ

いやぁーーー良かった(真顔)

全部見た上で、なんかもうどんな感情でいればいいかよくわからないのですが。個人的にはかなり好みの作品でした。

ベノマ玲さんのシナリオは、やっぱりどこかひねくれているというか、予想の斜め上を行くというか。一度味わうとクセになってしまう。

ウーユリーフが楽しめた人は、紡ロジックも楽しめると思いますよ。シナリオで殴られるようなゲーム体験が好きな方におすすめ。

前半は未プレイ勢向けにネタバレなしのゲーム紹介。後半のネタバレ感想部分はON/OFFできるようにしてあります。

大前提として、あんまり何も言いたくない作品です。ちょっとしたネタバレもしたくない。気になったらその時点でとりあえずプレイしてみてほしい。

紡ロジック -青春ドラマ×推理アドベンチャー

紡ロジック -青春ドラマ×推理アドベンチャー

SEEC Inc.無料posted withアプリーチ

当記事では、株式会社SEECのアプリゲーム『紡ロジック』のスクリーンショット画像を利用しています。当該画像の転載・再配布等は禁じられています。©SEEC Inc.

紡ロジックとは

概要

『紡ロジック』は、SEECが2018年12月5日にリリースしたアプリゲーム。基本プレイ無料は無料、時間経過や課金で読み進めるチケット・スタミナ制。脱出アドベンチャーノベルです。

あらすじ

主人公・瀧紡(たき つむぐ)は、大学進学を機に名古屋へ引っ越してくる。ゆるやかに始まる新生活はちょっとした謎だらけで…。

下宿先の和川荘の面々、大学の友達、サークルの仲間、地元の友達。紡と彼を取り巻く人々の(非)日常の青春群像劇。

システム

ノベルパート

ノベルパートでは、大学生活を送る主人公・紡の視点で物語の真相に近づいていく。

探索パート

探索パートでは、人から情報を得たりアイテムを手に入れたりする。ちょっとした謎解きがあることも。

推理パート

推理パートでは、集めた情報やアイテムをもとに推理していく。

おすすめの進め方

本編は無課金、気に入れば特別ストーリーに課金がおすすめ

結論から言うと、本編は無課金で読破、必須ではないが特別ストーリーに課金がおすすめ。

オオハシ

回し者じゃないよ!

他のSEEC作品と大体同じ仕様で、毎朝5枚ずつもらえるチケットで本編を読み進めていきます。時間こそかかりますが、本編は無課金で全て読むことができます。

一気読みしたくなりますが、課金を許容するにしてもチケット直買いはコスパが良くないため、本編はできるだけ無課金推奨です。金銭面度外視で早く読みたいという方以外にはおすすめしません。

他方、特別ストーリー(以下、特スト)には課金推奨したい。実質、課金必須といえる内容だった『ウーユリーフの処方箋』の特ストほど重要度は高くないものの、本編が刺さった方は、新たな真実に確実に悶えることができる内容になっています。

特別ストーリーとミニゲーム用のアイテムが付いた「スペシャルセット」で2,940円(2021年6月23日現在)。楽しんだ分を公式に還元するなら、特スト購入は健全な価格でおすすめの課金先です。

紡ロジックの特ストを「パンドラの箱」と表現しているツイートを見かけましたが、言い得て妙ですね。

オオハシ

ほんとそれ。

バッドエンドを通るのも、悪くない

所々にバッドエンドがあり、チケットを無駄にしたくないあまり初見プレイでTRUEルートに行きたくなりますが、ノーミスにこだわらなくても大丈夫。むしろ、バッドエンドを見ていることで考察が捗ったりするので、最後に全回収するより先にバッドエンドの世界線を見ておくのも面白かったかも。

本編シナリオ感想(ネタバレあり)

オオハシ

ここからオタクの長文語りします。袋とじはネタバレです。

全部飛ばして結論だけ見たい方は、最後の総評へどうぞ。

推せる主人公、紡

主人公が最推しになる作品って今までほとんどなかったんですが、この作品に関しては紡が一番好きかも。

紡は、ギャップが魅力的なヤンキー。渋い映画とか観るような、文化に造詣が深い面を持ちつつ、ヤンキーらしくしっかり腕っぷしも強い。無鉄砲な元気野郎とか、ただ「平凡」と描かれるだけのよくある主人公像ではなくて、パーソナリティにリアルな深みがあって好感が持てます。

「地方には娯楽がないからヤンキーになる」というのは、地方出身かつ上京経験のある者としては、よくよく理解できる感覚です。地方の文化水準では、若い貴重な時間を費やす先の選択肢が少なすぎる。都会にいれば当然のように見える選択肢も、人や情報の集積しない田舎ではなかなか見えてこないものです。

家庭に大きな問題がなく、好きになれそうな趣味や関心の種も持っているのに、特に理由もなくヤンキーになる人間は珍しくありません。その中には、実は紡のように渋い映画を好むような文化的素養を持っていたり、根が誠実で良心的だったりして、あまり世間一般のヤンキー像に当てはまらないような少年少女もいるわけです。紡も、都会で日常からたくさんの作品に触れる場所と機会のある環境で青春を送っていれば、サブカル系おしゃれ男子に仕上がる世界線があったかもしれない。

そんな紡を主人公に据え、プレイヤーに対して「あれ?もしかして…」と徐々にヤンキー疑惑を植え付けつつ、かっこいい見せ場を作る仕掛けは面白かったです。

旬を助けるシーン。元ヤン疑惑がほぼ確信に変わる瞬間。

※ ネタバレ・規約違反回避のためモザイク処理しています。

6章良かったですね。紡が最高。あの展開から元ヤンカミングアウトは熱い。スズキくんやトキオとの掛け合いも好き。

本性を表した琴子を恫喝する場面。

※ ネタバレ・規約違反回避のためモザイク処理しています。

そして奪った刃物を琴子に突きつけて静かに脅迫する場面。

※ ネタバレ・規約違反回避のためモザイク処理しています。

あんなスチルある?

いかにもラブコメ的雰囲気で出てきたヒロインポジションの女の子と、最終的にはあんな物騒な接近戦になるなんて。そしてここぞというタイミングでの伏線回収セリフ。紡かっこいいよ、紡。

今作の良質な地獄の一つでした。最高。

「わたしは〇〇〇〇〇〇、だからあなたも〇〇〇〇〇〇」理論

「わたしは頑張っている、だからあなたも頑張りなさい」理論

6章、胡散臭いサークルの運営の尻尾をつかむため、船上パーティーに潜入する話。これはプレイヤーによって琴子への印象が分かれるエピソードだったと思います。

琴子は、自分は人から好かれるようにお洒落や立ち振る舞いに気を配っている、努力していると主張しました。そして美麗に対しても変化を促した。

しかしこの行動を見て、個人的には、琴子は実際にいたらかなり苦手なタイプの人間だと思いました。非常に押し付けがましい。特にそう感じる理由が以下の二点。

第一に、持てる者が持たざる者に努力を説いている点。琴子がどれだけ人に好かれる容姿や立ち回りを研究して、自身を磨く努力をしていたとしても、大前提として琴子はその手の素質に恵まれた側の人間です。現代日本の社会一般的な評価において人並み以上の顔面、華奢な骨格、高すぎず低すぎないちょうどいい身長、対人コミュニケーションへの興味とセンス。万人に好かれることにつけては、琴子は美麗が持っていない適性を持っています。その尺度では明らかに劣る美麗を同じ土俵に勝手に上げようとするのは酷な話。

第二に、自分がしている苦労を他人にもさせようとする点。「自分の苦労を知らずに、さも努力してないみたいに言われるのは心外」という主張までは妥当です。しかし、だからといって、他人に同じことをさせようとするのは琴子のエゴです。本人が自発的に望んでもいない努力をさせようとするのは、善意の押し付けでしかない。

「わたしは頑張っている」事実は「あなたも同じように頑張りなさい」と言える免罪符にはなり得ません。

結局、美麗が歌というとんでもない才能を隠し持っていたことで、話はなあなあになってしまいました。が、美麗との一連のやり取りは、琴子が他人を「(琴子の価値観で)より良くなる 」道へコントロールしようとするきらいがある人物だと感じさせるには十分なエピソードでした。

ちなみに、美麗が琴子のプロデュースを受けてイメチェンする分岐エンドでは、ドロシーではなくなった美麗を見た斗真が「彼女らしさが失われた」と語りました。それは個性の死だと。

変身を肯定するサリーの意見にも一理ある(そして本人が辛い過去と決別しようとした体験談だった)けれど、筆者個人としては、美麗本人の積極的な意思や、滲み出る本質的な趣味嗜好を尊重する斗真の意見の方が馴染みます。

それは〇〇〇〇〇〇か、〇〇か。

それはプロデュースか、傲慢か。

琴子は他人の美点欠点が見える観察眼があって、どうすれば「より良くなる」かがわかる。だからこそ、すぐ他人をプロデュースしたがる。でもその「より良くなる」というのは琴子の価値観での話であって、本人の意向は完全に無視しています。

琴子は兄以外に興味がないから、美麗のプロデュースを申し出たときも、そこに執着はしなかった。高校時代の紡へのアドバイスも、紡がそれを好意的に受け取るような初心で素直な少年だったことで、紡にとって良い具合に機能しました。

本来、他者をプロデュースするなら、そのくらいの距離感がよかったのです。ほどよい熱量で、忖度なく客観的に提示される助言は、時として貴重なものです。

しかし、執着の対象である優には、異常な熱量で琴子のプロデュースを一方的に押し付けてしまった。歪んだ愛が膨らんで「穢れのない、清らかな、わたしの大好きなお兄ちゃんでいてほしい」と願うあまり、兄の内心を顧みることもなくコントロールしようとした。とんでもない支配欲です。

結果、全てがこじれてしまった。

そして、琴子が紡のせいにしていたことは巡りめぐって全て琴子のせいでした。というのも、

優が紡と出会うきっかけが生まれたのは、優が琴子の勧めた園芸委員であったから、そして紡も琴子が勧めた陸上部員だったから。優がテニスサークルに入ったのは、琴子が優にミス研を勧めたことに反発して、また紡のような人間に出会いたくなってしまったから。皮肉ですね。

上手くやれば敏腕プロデューサーの素質があった琴子ですが、内に秘めた傲慢さが災いして、プロデュース力の使い方を誤りました。人の意思は変わりゆくものなのに「自分の大好きなお兄ちゃん」の幻想を追い求めて、現実の兄を縛り付けてしまった。

他人を変えようとしたり、変わらないようにしたり。こうやって、自分の都合で他人をコントロールしようとするような関係の結末は、ろくなことになりませんね。

突然〇〇になるじゃん…

突然不穏になるじゃん…

8章で終わりと見せかけて、9〜12章追加。ここからが本番とばかりに、まさかのアナザーオープニング。これまでのほっこり感はなんだったのだと思わせるような不穏すぎる展開には虚を衝かれました。ここまで全部、壮大な前フリですか、そうですか。

「やっぱりSEECさんこういう感じ!?」という驚きとともに、こんなところでのんびり平和な日常ドラマでは終わらせない、まだまだ急転直下の展開で楽しませてくれる安心感(?)もありました。こういう演出すごく好き。制作者もこういう仕掛けはきっと楽しんで仕込んでるんだろうなと想像します。

怪しすぎる〇〇〇〇、〇〇〇〇〇〇〇の妙

怪しすぎるヒロイン、稚拙なトリックの妙

終始、琴子が怪しすぎるんですよ。蒼星みたいにイタリアの写真一枚で気付くことはできなかったけど、優ちゃんの話で顔を曇らせたり、紡との会話で「お兄ちゃんに会ってね」という若干不自然な言い回しをしたり、6章で他人をコントロールしたがる節が出ていたり、不審な点は作中のあちこちに散りばめられてました。

メタな話になりますが、無人島での事件が進むにつれて、プレイヤーの琴子への疑念が確信に変わっていくような仕掛けになっています。

コテージで聞き取り調査できないし、みんなが琴子に良い印象抱いてるし、和川荘で屋根に登れていてかなり運動神経が良いのがわかっているし。

優の件についても、両親が離婚していることから、その後の優の苗字が琴子と異なることは想像に難くない。沖田=ユウ(優)=マサルと結びつく。そうなると、イタリア留学はブラフで、過去の飲酒事故の被害者は優だと推測できる。

さらに証言を聞いても、小池の件で琴子のアリバイがない(飲み物とスキンケア用品を取りに自室に戻るには、10分は長すぎる)。管理所に先に入ろうとする。役満。

すぐに犯人が透けるお粗末なトリックでしたが、琴子が「ロクに勉強していなかったであろう紡が入学できた高校での才女」というのは、蒼星もよく言ったものだと思います。雑なトリックがシンプルに説明されていた。プレイヤーが紡というフィルターを通して見た琴子は、頭が良くて運動ができて可愛くてコミュ力の高い、憧れの存在として君臨する最強スペックのヒロインかもしれないけれど、蒼星のような頭のキレる人間が引いて見れば、少なくともその頭脳は平凡な大学生のそれでしかない。

このトリックの稚拙さが、作品としては逆に魅力的な演出だったと感じています。狡猾な犯人が仕掛けた巧妙なトリックを楽しむミステリではなくて、水面下でこじれにこじれた人間関係を描写する群像劇に振り切った潔さ。好きです。

〇〇〇の意思決定

サリーの意思決定

全編を通して、サリーが凶行に及ぶ理由だけは解せなかった。紡と斗真に出会えていたのに。キャラクタープロフィールの制作秘話で述べられている通り、元の脚本では犯人側ではなかったというのも肯けます。

多方面の交友関係、〇〇〇の群像劇

多方面の交友関係、意味怖の群像劇

この作品の面白いところの一つとして、紡という人間を様々なコミュニティで見られるというのがかなり大きいと思っています。それぞれ価値観が違ってもウマが合う斗真とサリーとの仲良しグループ、ほどほどに付かず離れず安心感のあるミス研の先輩・同期関係、地元の気心知れたヤンキー仲間、その他大学で知り合った人たち。

こういった交友関係の描き方はかなりリアルで、それぞれの人間との微妙な距離感の違いや対人コミュニケーションのスタイルから、紡の人物像や行動規範が明らかになっていく構造が面白い。

後半のシナリオを見ると、前半の時点で水面下では不穏な動きが既に進行中だったことがわかります。紡の交友関係を軸に、隠された人間関係や、各々の行動の意図を知ることで、表面的にはそこそこ平和に見えていた日常生活が全然違う話になる。意味がわかると怖い=「意味怖」の群像劇。

特別ストーリー感想(ネタバレあり)

オムニバス形式の短編集で、裏話・後日談を描くものでした。本編で完結しているので読了必須の内容ではありませんが、本編が気に入ったらぜひ読んでみてほしい内容です。

オオハシ

読めば、知らない方が幸せだったかもしれないことまで知ることになります。

第1話

第1話:2人の女

琴子とサリーのやり取り、水面下での腹の探り合い。琴子もサリーも私怨を自覚していたけれど、理不尽な復讐を果たして新たな出発を無邪気に喜ぶ琴子と対照的に、サリーは琴子の罪さえも引っくるめて全てを被り、無関係な紡を守る計画を一人で決意した。

そのやり方にはどうしてそこまで追い込まれてしまったの、という絶望感はありますが、やっぱりサリーの心にはヒーロー性がありました。

第2話

第2話:パートナー

諸戸宮兄弟の真実が明らかになる話。本編でちょっと察していたところもありました。なんかそんな気はしていた。

姿を見せない影元さんが、ちょくちょくシナリオ上での存在意義を発揮しているのが面白い。影元さんが趣味の新人俳優ウォッチングで「諸戸宮紅陽」を追っていたおかげで、紡は出演作を一気見して「諸戸宮蒼星の演技」に気づいた。

紡に対して素直に真実を話す蒼星の姿は、初対面で本当に本当の名前を名乗っていた場面に重なります。

相互依存で生きてきた双子は紡を介して過去を清算し、新たな関係を築き始めました。大きな秘密を共有し、一連の事件を共に乗り越えてきた紡と蒼星の信頼関係もまた、名状しがたい良い関係。

第3話

第3話:再起

竜胆と紡の再会。竜胆の下の名前、龍麒(りゅうき)が明らかになる。龍麒に根っからの悪人というよりは環境に恵まれなかった者の匂いを感じて、散々煽り散らかしつつも、助け舟を出す紡。彼の対人スキルを認めており、それを正しく発揮できる道筋に乗せるためスズキくんを改めて紹介する。

紡のさっぱりした対人コミュニケーションのスタンスがここでも見られます。スズキくんと仲良くなった経緯もそうだし、カンニングの一件後になんやかんやで司と普通に友達になっているのもそう。スズキくんが言うように、紡は喧嘩相手にも慈悲深い。まあ全部紡が勝っているので、厳密には対等な友人関係というよりは上下関係をつけて手懐けたということなんでしょうね。

そして後に斗真も気づいているように、紡はネガティブな感情が持続しない(できない)。ある意味ドライに関係を築ける紡のこういう感覚。小気味良いエピソードでした。

第4話

第4話:君の素顔

サリーの母と、紡・斗真が語り合う。それぞれに向けて手紙をしたためていたサリー。紡の弔い方は、サリーを主人公のヒーローに据えたゾンビものを書くことになりそうだ。一方、手紙について多くを語らない斗真はどうするのか。第7話への伏線となるエピソード。

第5話

第5話:旅立ち

事件後、姿を見せない直羽は、看護師になるために転学するという。吉本先輩も、紡と斗真が彼の酒癖による事件を黙っていたために、問題なく就職を決めることができた。紡も事件の手記を書き終え、ゾンビものの執筆に着手する。数少ない、希望のあるエピソード。

第6話

第6話:何者でもない僕たち

優ちゃんの過去。紡と将来について語り合うが、自分の人生を諦めきって「普通でいい」「分相応をわきまえてる」と言う。

マスコミは小池ふみにトラウマ的過去を求めたが、実際はそこそこ恵まれた中流家庭で育った普通の人間だった。

裏サークルの真実を綴った彦根の小説も、ここで表に出れば売れただろうが、結局小説は出てこないし執筆者本人もいない。有名になり損ねた。

結局、みんな何者でもなかった。

影元さんがサルベージした動画で、紡は優の白を確信するが…。

第7話で斗真の動きを知ってから見ると、また思うところのあるエピソード。

第7話

第7話:葬る人

これ読めただけで、特スト課金の意義は感じます。お見事。

サリーの思いと隠された真実の動かぬ証拠。思慮深く、個々人の人間性を重んじる斗真の判断に、サリーは全て委ねた。

斗真は本当に精神的に成熟している。どこまでも誠実で、心優しく強い人間。サリーの消したい過去が入ったUSBは壊して、紡には優の裏サークル関与を伏せて。そしてこれからも自分だけが知る真実を抱えたまま、斗真がそれを口外することはないのでしょう。

仲良し3人グループとはいっても、やっぱり一人一人の関係性なわけです。紡と斗真、斗真とサリー、紡とサリーというそれぞれの1対1の信頼関係が根底にある。

2人に秘密を共有するのではなく、斗真だけに打ち明ける判断をしたサリーの見極めは結果的に正しかった。苦しみを生む真実を知らない紡は素直に物を書く気になっていて、斗真は全てを知った上でサリーの望みを汲み取って真実を葬り、彼なりの弔いを遂げる。

3人とも友人思いで、誠実で、本当にいい関係性だと思います。正史では、サリーも含めた3人の未来を想像できる世界線に行けないのが惜しい。

この作品を本当に締めくくったのは斗真でしたね。地獄でしたが、作品としては、救いのなさがまた良い。

第8話

第8話:2つの反抗

大門先輩は優とも面識あったんですね。そして紡と出会う前に優から紡の話を聞いていた。

優は全て琴子に従う生活の中、紡と仲良くなるきっかけを得た。園芸委員の優と陸上部員の紡が出会ったのも、人を見た目で判断せずに接することも、素直に琴子に従った結果。

2つの反抗は、優の琴子に対する反抗。1つは紡とつるむこと。もう1つは、紡のような人間に会いたくてテニスサークルに入ったこと。

優が思うよりずっと、紡は優のことが好きだった。それを知らなかった悲劇。自分を卑下しすぎて、自分が紡にとっても大きな存在だった可能性を考えることもなかった。

大門先輩が、損得勘定でこの話を紡にしなかった結末はとても好き。だから紡は書く気になれる。

第9話

第9話:新しい物語

諸戸宮兄弟と孫さんと温泉旅行。紡が新しい物語を書く話が仲間内で大きくなり、地元の友達も和川荘の面々も楽しみにしている。希望を持たせつつ、若干不穏(?)なエンド。

設定資料集感想(ネタバレあり)

オオハシ

どハマりしたので、設定資料集も購入してみました。

設定資料集の価格は2,320円(2021年8月9日現在)。内容としては、キャラクターやスチル等の各種デザイン過程、ラフ画、原作者・開発スタッフインタビューなどなど。

読み物として面白かったです。そこそこボリュームありましたが、コスパ面でおすすめしにくく、あくまでファンアイテムという認識でいいと思います。

ちょっとだけインタビュー感想。

不穏すぎる「四辻」の名字についても匂わせがあった通り、やっぱり由来は四つ辻の美少年なんでしょうね。その恋は絶対に実らない。

総評

SEECさんというのはこういうゲームを作るのね、という印象を鮮烈に焼き付けてくれた作品でした。シナリオに関しては新作のウーユリーフよりも好きかもしれない。青春の日常を描く軽めのミステリかと思いきや、シナリオでぶん殴る系の作品です。

総合お気に入り度4.5 out of 5 stars (4.5 / 5)
シナリオ4.5 out of 5 stars (4.5 / 5)
システム3 out of 5 stars (3 / 5)
キャラクター4 out of 5 stars (4 / 5)
グラフィック3.5 out of 5 stars (3.5 / 5)
ボイス3.5 out of 5 stars (3.5 / 5)
音楽3 out of 5 stars (3 / 5)
オオハシ

その後、最近のSEEC作品は大体プレイしましたが、個人的には一番好きな作品。ただしこのシナリオにハマれるかどうかはかなり個人差がありそう。

作品情報

https://se-ec.co.jp/appgames/tsumugulogic/

紡ロジック -青春ドラマ×推理アドベンチャー

紡ロジック -青春ドラマ×推理アドベンチャー

SEEC Inc.無料posted withアプリーチ

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