パル@IVRC2015『ニョキニョキ豆の木』の中の人です。
IVRCシリーズ第4回は、記録についてのお話です。
今年以降、IVRCでは審査方式等に大きな変更があったようです。詳しくは公式の最新情報を参照してください。また、当記事はコンテスト形式の旧IVRCについて書かれたものですので、参考にする場合は十分ご注意ください。
目次
まず、覚えておいてほしい。
記録は大事!!
どんなに切羽詰まっても、記録だけは絶対に残しましょう。
これが大前提。もちろん制作中も展示中も、記録どころじゃないくらいに忙しいと思います。でも、IVRCが終わってから何の記録もない状態になってしまっては、せっかくの成果を証明できません。特に決勝で3位以内なら、学内外での展示や報告、論文発表、メディア掲載などの機会はほぼ間違いなくあるでしょう。
記録は、なんとなくとるものではありません。機材や人手を確保して、計画的にとるものです。
というわけで今回は、忘れがちだけど大切な「記録」のポイント5つを解説したいと思います。
1. 実験データを採る
展示中にもデータは採れます。
展示前に、実験設計をしておくとよいです。設定をいくつかのパターンで試せるようにしたりとか。
実装で手一杯になって実験設計まで全く手が回らなかった場合でも、展示の実績として体験者数くらいはカウントしておきたいところ。通行量調査で使われるような数取器があると便利です(100均でも買えます)。もちろん、展示の際だけではなく制作段階でも実験データを採れると論文につなげやすいでしょう。
2. 議事録をとり、すぐに共有する
ミーティングの議事録は、毎回とりましょう。
ミーティング中にさくっと箇条書きして、終わったらすぐに参照しやすい形で共有します。
うちのチームの場合は、LINEグループでノート機能を使って投稿していました。
全員がチーム全体の進行状況を把握することで、うまく回っていない部分を早めにフォローしやすくなります。また、次回のミーティングまでの課題を自己申告しておけば、個人の作業ペースもある程度管理できるメリットもあります。
それから、議事録を残しておくことにはノウハウの蓄積という意義もあります。どの時期にどんなことを考えていて、どういう問題に直面したのか。これは、研究室に蓄積できる重要な情報です。
今まさに読んでくださっている「IVRCを攻略する」シリーズも、ミーティング議事録を大いに参考にしています。
3. 写真を撮る
制作プロセスも展示も、その様子を写真に収めましょう。
さらに言うと、スマホで撮るだけでなく、一眼レフで撮ったきれいなものがあると、大会後にすごーーーく重宝します。以下に、必ず撮っておきたい構図を列挙しておきます。
3-1. 制作過程
- 実験風景
まず、アイデア段階のもの。これは、作品が完成してからルーツを辿れるようにするためです。
ニョキ豆チームでは、公園の遊具にぶら下がっている写真とか。結局、それは痛かったらしくハンモック式の機構になったんですけどね。アイデア段階の試行錯誤は、もっと撮っておけばよかったと思います。 - プロトタイプ
予選までほとんど撮らず後悔。失敗作含め、もっと撮ればよかった。作品が完成した後も、メイキングはコンテンツになります。
3-2. 設営・展示の模様
- 作品 + メンバー全員
壊れる前に!これ大事。設営が完了したら、メンバー全員集めてすぐ撮りましょう。学内外でIVRCでの取り組みを紹介するときに最もよく使う構図です。 - システム単体の全体像
主に論文などで技術的な話をするときに使います。人が写っていない、システムだけの構図で撮っておきましょう。細かい機構もそれぞれ撮っておくと、システム構成の説明をするときに便利です。 - 体験中のプレイヤーの表情
体験者の表情が見えるものがいいです。リアクション芸人してくれる方にモデルをしてもらえると助かる。 - ソフトウェアの操作画面
ハードウェアばかり撮りがちですが、裏方も撮っておきます。どうやって動かしているのかというシステム面の話をするときに使います。
3-3. 授賞式
- 受賞して喜ぶメンバーの図
受賞を証明できるカッコイイ写真も撮っておきましょう。チーム内で人数を割けない場合でも、あらかじめ誰かに頼んでおくとよいです。
4. 動画を撮る
デモ映像用の素材集めをしておきましょう。
必要になってから作り始めると、映像素材を撮るところから始めなくてはいけません。この作業には膨大な時間を要します。ぜひ、映像素材は制作中・展示中に撮っておきましょう。機材がなければiPhoneでもOKですが、いいビデオカメラがあればぜひそれを使ってみてください。欲しい構図は、写真と大差ありません。
この時点で外注するのもアリですが、IVRC後も展開していく場合は大幅にアップデートすることも多いので、どの時点でちゃんとした映像に残すかというのはちょっと難しい判断ですね。
あとは、設営中にタイムラプスやると面白いですよ!
ちなみに、Laval Virtual出展に際してはデモ映像の提出が求められます。Laval Virtual賞を獲るつもりでやっているチームは特に、IVRCの展示風景でデモ映像を作ってしまうことをおすすめします。時短大事。
5. 体験者からコメントをもらう
特に予選のプロトタイプ審査では、体験してくれた方に積極的にアドバイスを求めましょう。
というのも、体験してくれる方の大半がVR研究の第一線で活躍する研究者の方々だからです。そもそも予選大会はVR学会内で開催されることも多いですからね。
アドバイスを求める際のコツは、気になった点を自由に指摘してもらうことです。アンケートで仮説検証するだけ、というのはもったいないと思います。下手にVRをかじった自分たちよりも、はるかに目の肥えた研究者の方々から辛口コメントを引き出したい。そのためには、根本的な問題点を指摘する余地を残す必要があります。ただ自分たちの仮説を検証したり、感想を聞いたりするだけでは不十分でしょう。
手軽なところでは、ヒアリング担当を決めて、体験直後にインタビューする方法がおすすめ。書くのは面倒でも、話すだけならほとんどの方が協力してくれます。「これがよくない」だけでなく「じゃあこうすればいいんじゃないの?」と改善方法まで提案してもらえることもあります。
でも一番するべきことは、体験者を観察することです。彼らが思うように動いてくれないとき、思うように反応してくれないときは、こちらの提示の仕方が悪いのです。
例えば、体験者が向いてほしい方向を向いてくれないときに、「こっちを見てください」と、体験中に説明しないといけないのは、そもそも体験としてよくない。自然とそっちを向いてしまうように、UIを設計し直す必要があるのでは?と考えるべき。
ともあれ予選は、自分たちが見つけられなかった問題点に気づくチャンスです。決勝を見据えたユーザーテストの場として存分に利用しましょう。
まとめ
「記録をとる」という行動は、作品の制作にも展示にも直接的には関係しません。忙しくなるとどうしても優先度が落ちてきます。でも、後から必要になったからといって、足りない!と嘆いても遅いのが記録なのです。そうならないためには、地道に記録していくしかありません。まずは、こういう記録があったほうがいいよね、という計画をチームで検討してみてはどうでしょうか。